日本マイクロソフトは2月25日、IaaS/PaaS「Windows Azure」を提供する“日本データセンター”が2月26日午前0時から正式に稼働すると発表した。これまで試験的に運用していた。
日本マイクロソフトの代表執行役社長の樋口泰行氏は「当社は長年にわたり営業活動、顧客サポートを日本で行っている。その下地がない、クラウド専業ベンダーとは異なるサービス体制を提供できる」と自信を見せた。樋口氏は米本社の新しい最高経営責任者(CEO)となるSatya Nadella氏について、「直近の役職はクラウド担当で、日本データセンターを企画した張本人でもある。私自身一番CEOになってほしいと思っていた人物であり、できるだけ早く来日してもらいたい」と話した。
日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏
Microsoft Windows Azureビジネス & オペレーションズ ゼネラルマネージャー Steven Martin氏
スピードではなく品質が重要
「2014年の早い時期に開設する」と以前発表されていた日本データセンター(正式名称は「Windows Azure Japan Geo」)は、東日本リージョンが埼玉県、西日本リージョンが大阪府という2拠点体制となっている。詳細な場所や規模、投資額などは公開されていない。
Microsoftはワールドワイドにデータセンターを開設。アジア地域では、香港とシンガポールに開設されていた。日本についても、2013年5月に前CEOのSteve Ballmer氏が来日した際、東日本と西日本の2拠点体制でデータセンターを開設すると発表していた。
発表から実際の開設まで1年弱かかった理由について、MicrosoftでWindows zure ビジネス&オペレーションズ ゼネラルマネージャーを務めるSteven Martin氏は「われわれはスピードではなく品質が重要だと考えた。プレビューとして長い間稼働させ、われわれも顧客も全てOKという状態になるまで待って、正式な稼働となった」と品質を重視したためだと説明した。
日本データセンターの特徴は、従来の海外リージョンを使用していた場合と比較し、遅延が3倍以上に改善していること、東日本と西日本と日本だけで2つのデータセンターを持つことで、国内にデータを保持しながら災害対策(DR)できるということを挙げた。
日本マイクロソフトが無償相談窓口「Cloud Direct」を開設してクラウド導入を支援するほか、海外リージョンや富士通が提供しているWindows Azureベースのデータセンターからの移行についても有償でサポートし、24時間の障害サポートも日本語で有償で提供する。「日本マイクロソフトが責任を持って、導入からサポートまでトータルで支援する」(樋口氏)。特にDRについては、東日本と西日本のそれぞれ3重レプリカ体制を取り、合計で6重レプリカで容易に対応できることを強みとしてアピールしている。
正式稼働以前からパイロット版を利用し、検証したサポートプログラム参加企業がサンリオ、JTBなどのユーザー企業、オービックビジネスコンサルタントやトレンドマイクロなどの独立系ソフトウェアベンダー(ISV)、伊藤忠テクノソリューションズや大塚商会、日立製作所、野村総合研究所(NRI)などのパートナー企業などは36社となっている。正式稼働段階で、パートナー企業は120社以上、Windows Azureを活用したサービスは300以上、技術者は5000人以上となっている。
Microsoftは企業向けの戦略として“クラウドOS”というビジョンをアピールしている。このビジョンでは、Microsoft自身がSaaS「Office365」やゲーム「Xbox LIVE」などのサービスをWindows Azure上で展開している実績、既存のIT資産とクラウドの統合、Microsoft以外の技術であるLinuxやJava、PHP、Oracleなどの混在環境に対応、セキュリティやコンプライアンスの保持をうたっている。
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セキュリティと信頼性については、「企業向け品質のセキュリティを確保するために注力している。月次のSLA(サービス品質保証)を保証している」(Martin氏)と注力していることを強く訴えた。ユーザー企業数は、日本リージョン開設前から日本だけで1万が存在という。Microsoftは2013年だけでAzureに1000億円を投資したと説明している。
ユーザー企業の既存資産であるオンプレミスとの共存についても、「調査では、2020年にはIT予算総額の45%がクラウド関連に投資されると言われている。その一方で、74%の企業がクラウドを必要に応じて、オンプレミスに移行することを期待するという調査結果も出ている。Microsoftは、この要望にも応えられる。2020年になっても、世界の大企業2000社のうち80%がIT資産の5割以上をオンプレミスで保有するという予測もあり、Microsoftではクラウドとオンプレミスのどちらでも要望に対応する」(Martin氏)とクラウド一択ではないことを強みとして挙げている。